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その5 第七話 ノーレート麻雀

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-11-01 10:00:00

43.

第七話 ノーレート麻雀

 コカトリスの唐揚げを食べた私は、満腹になりまた眠くなっていた。

「いやー、それにしても唐揚げ美味しかった。こんなに美味しい唐揚げなら毎日でも食べれるよ。あ……お腹いっぱいになったら眠くなってきた」

「さっきまで寝てたじゃないの! とは言え、実を言うと私も眠い。ごはんたっぷり食べたからね。ちょっと昼寝してもいいかな……」

「昼寝っていうか、今寝ると普通に『寝』だけどね」

「チョッ、チョット。おふたりサン! ダメデスヨ。起きててくんなきゃ。何のために帰したか忘れマシタカ」

「えー、何のためだっけ?」

「遅番やるための時間調整」

「あたしゃハナから遅番のミズサキだよ」

「今寝そうだけど?」

 時刻は夜の11時である。遅番的には真っ昼間もいいとこだ。

「遅番はいつでも眠いの」

「それ、ミズサキだけじゃなくて?」

「けっこう遅番あるあるだと思うけどなァ……。ちゃんと寝て来ても4時頃には眠くなるとか」

「4時頃には、ね。今は11時だからやっぱ起きてようよ」

「えーーー? 休みの日くらい自由に寝たいよぉ」

「睡眠時間の調整もメンバーの仕事デスヨ。寝る時間は仕事のうちだと思って計算して睡眠してくだサイ」

「ある程度は同意できる……けど、そうなると睡眠時間も給料が発生することになるわよね? 今までの従業員にはその睡眠時間も含めて給料与えてたの?」と鋭いツッコミをする涼子。さすが、抜け目ない。

「ギクゥ!」

「エル。あんまり面倒なことは言わないに限るよ、睡眠時間くらいは好きにさせりゃいいじゃん。そこまで管理しないでもさ」

「そ、そーネ」

「てことで、私たち1時間くらい寝るからカー

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